アート

イラストレーター 茂苅 恵さんインタビュー「絵を描くことが好きで、いつか絵の仕事をしたかった」

今回のインタビューは、イラストレーターのくぼあやこさんにご紹介いただいた、同じくイラストレーターの茂苅 恵さんです。装画や挿絵、ビジュアル広告など幅広いジャンルで活躍する茂苅にお話を伺いました。

—茂苅さんはどのようなお仕事、活動をされていますか?

イラストレーターです。国内外問わず、装画や挿絵・雑貨デザイン・キャクター制作・企業ビジュアル広告などが主な仕事です。

—最近手がけたものを教えてください。

『散歩するネコ れんげ荘物語』の装画

『散歩するネコ れんげ荘物語』群ようこ
ハルキ文庫

『ある晴れた日に、墓じまい』の装画

『ある晴れた日に、墓じまい』堀川 アサコ
KADOKAWA/角川文庫

アウトドアテープ』のクマのキャラクター

おおきめシール』のデザイン フードとズー

富士フイルムの年賀状印刷 2021』の年賀状イラスト

—イラストレーターを目指したのはいつ頃ですか?

小さいころから絵を描くのが好きで、いつか絵の仕事をしたいと思っていました。
本格的に始めたのは2014年くらいです。

—きっかけは?

ふらっと立ち寄った本屋さんで、素敵な装画(そうが)の本が気になって。
村上龍さんの『歌うクジラ』という本で、上下巻並べると1頭のクジラになるデザインでした。

『歌うクジラ』村上 龍
講談社

それで「誰のデザインなのかな?」と調べてみたところ、『鈴木成一デザイン室』の鈴木成一さんでした。

そのとき、頭から稲妻に打たれたような衝撃が走り「イラストレーターになって、この人と一緒に仕事をする!!」と思いました。
その場で鈴木成一さんの著書を買って、その足で『パレットクラブスクール』の入学手続きをしました。

『パレットクラブスクール』で1年間イラストを学び、卒業するかしないかの時期に「鈴木成一装画塾」の塾生募集(審査あり)が開催されることを知り、すぐに申し込みました。

30名くらいのイラストレーターが2冊の本のゲラ(試し刷り)を読んで、その装画を描きます。その中から鈴木さんが1枚を選び、実際に仕事として1冊の本を一緒に作るというコンペ方式でした。

鈴木さんの講評を直接聞けることが嬉しかったです。
幸運というか不思議なことにそこで選んでいただけて、初めての装画の仕事が鈴木さんとの仕事いう夢のようなスタートでした。
その名も『VIRGIN(ヴァージン)』という題名の海外の作家さんの本の装画でした。
私のイラストレーターとしての初めの一歩で一生忘れられないと思います。

『Virgin(ヴァージン)』ラディカ・サンガーニ
辰巳出版

—好きな仕事のジャンルはありますか?

装画です。本を作る一員って最高に嬉しいです。
最近増えてきたキャラクターの仕事も好きです。ファッションの仕事も楽しいです。嫌いな仕事は無いので全部好きなジャンルです。

—作品を作る上で意識していることはありますか?

仕事というしばりですが、装画は本の内容を読んでいる間に、映像が頭の中に流れてきます。
最初に流れた映像をすぐに描きだすようにしています。
クライアントの頭の中のイメージを描きだすために、フラットな気持ちで描くようにしています。

何かの媒体を一緒に作り上げていく「歯車の一つ」であるという気持ちをいつも持っていて、私の次の工程を担当する方(デザイナーさんが多いですが)のために、納期よりも1日でも早く仕事を上げてスムーズに進むよう心がけています。

あと、メールも見たらすぐに返信するようにしています。
仕事は「できる時に終わらせる」という気持ちでやっています。「今日できることは明日に残さない」です。納期がまだまだ先でも、スケジュールが詰まってくるかもしれないので、とにかく手をつけて鮮度の高いうちに終わらせるようにしています。

—茂苅作品のポップでシュールな世界観がとっても素敵です!その世界感はどのようにして生まれるんですか?

ありがとうございます!嬉しいです!
仕事以外で自由に描く絵の場合は、脳内の出来事や感情を描いていることが多いです。
何かに心が動いた時(常に何かしらに動いているのですが)嬉しい気持ちや悲しい気持ち、怒りや不安など脳の中でいろいろな物質が増えたり、減ったり、弾んでいたり、慌てていたり。そういう様子を人物やキャラクターに置き換えたりして、俯瞰(ふかん)してみている感じです。それをそのまま描いています。

頭の中には正義感の強い屈強なヒーローが住んでいて、敵に応じて増減したり、不安になると青や赤のプニュプニュしたモンスターが出現したり。そういうものをただ俯瞰(ふかん)しているウサギがいたり、と考えると面白くなってきて不思議と不安や怒りなどが消えていきます。

この絵を描くきっかけになったのは、家族の受験や入院、手術、義母の死など緊張が続くことが立て続けに起きて、上手くスイッチをオフに出来なくなり(常に緊張している状態)めまいや吐き気や動悸が、なんの前触れもなく襲ってくるようになりました。
「疲れてるのかな?」と思っていましたが、電車の中で苦しくなってしばらく電車に乗れなくなってしまって、受診してパニック症と診断されました。

しばらく投薬してすっかり改善しましたが「自律神経が暴走することで、自分の体を自分でコントロールできない状態ってなんだ?」と思い、脳内で一体何が起きてこうなるのかを猛烈に調べているうちに、脳内物質などに興味を持ちました。そのバランスたるやとても繊細で。
自分の意識外での勝手な脳の作業で私が動いているのって、すっごく不思議で。脳内の世界を俯瞰(ふかん)してみるのが面白くなってきました。
それをそのまま絵にしたら、これがすごく愉快な作業で今に至ります。

—自分の怒りや不安が反映している作品は、茂苅さんにとってどういう存在ですか?

︎コロナの時にウイルスをヒーロー達がやっつけているのを描いて、「本当に一刻も早く消え失せろウイルス!」と思いながら描いていました。政治政策への疑問も絵にしました。
そうすることで、自分の中のネガティブな気持ちを昇華させているのだと思います。

—主にデジタルツールを使って作業されるんですか?

最初はガッシュと筆で描いていました。
絵具であることと、そこで生まれる筆のタッチとかに、すごくこだわっていました。
紙に落書きをするのも、絵具で描くのも、デジタルで描くのも、全部自分にとっては同じように「大好きな絵を描く作業」には変わりないなって気づいて、今はほとんどデジタルになりました。
クライアントの要望でアナログで描くこともあります。

—茂苅さんの思うアナログ、デジタルそれぞれのメリットデメリットを教えてください。

デジタルのメリットは、
消しゴムを使わなくていい。
どこでもいつでも描ける。
道具をたくさん持たなくていい。
描いた絵の収納がいらない。
デメリットは、
電気が不通になったらアウト。

アナログのメリットは、
電気が不通でも昼間なら描ける。
デメリットは、
消しゴムのカスが出る。
描いた絵や絵具など道具が無限に増えていくこと。
移動中電車とかではなかなか描けない。

ですね。

—お子様がいらっしゃると伺いましたが、お子さんが生まれてからイラストレーターデビューしたのでしょうか?

下の子が生まれてからです。

—イラストレーターになる前のお仕事は?


銀行員→一般職(営業事務や秘書など)→イラストレーターです。

幼い頃から絵描きになりたかったのに、ずいぶん遠回りしたなぁと思います。
でも多分「今」だったんでしょうね。

—家族がいることは作品に影響していると思いますか?

もちろん色濃く影響していると思います。
家族が元気で笑顔で幸せでいてくれることで、楽しく描くことができるんだと思っています。

夫からは、何が起きても悩まないことや、成り行きに任せるというような、人生を身軽に渡っていけるような心の持ちようを学ばせてもらっています。
子ども達と犬のチワワ(ミルクちゃんです)からは、無償の愛の尊さや毎日は喜びに満ちていること、溢れる好奇心や純粋さを思い出させてもらっています。

ミルクはもう17歳なのですが、魂は年齢と関係ないことや上手に老いていくこと、命の大切さを教えてもらっているような気がします。

いつもそばにいる家族が、私にいろいろな気づきをくれるからこそ、自分の内面を深く見つめることができて、それが作品にも影響していると思っています。
自分の作品のテーマの根底は「愛」なんだろうなと思っています。

今後やってみたいお仕事はありますか?

NHKの『シャキーン!』の仕事がしたいです。
内容も朝から目がシャキーンとなるくらい面白いのですが、いろんなイラストレーターさんが番組の中のコーナーを担当されていてすごく好きな番組です。

自分の絵が動く広告とかもやってみたいです。
半分イラストで半分小説の本の仕事もやってみたいです。

現在のコロナ禍において、活動の変化があれば教えてください。

元々家で作業しているので、ほとんど何も変わりません。
(子ども達がリモートの日は昼ごはん時に自分のペースが崩れるのが変化した点。)

打ち合わせがリモートになったのは嬉しいです。
移動時間ゼロはありがたい。

個展は開催しにくいかなと思います。
わざわざ足を運ばなくても生感を楽しめるような個展を開いてみたいと企んでいます。

今後挑戦したい事は?

少しづつ海外のお仕事も増えてきていますが、もっともっと世界中のいろんな人と仕事がしたいです。
絵で繋がりたいです。
他国の言語が話せなくても、今はスマホ1つで翻訳先生が喋ってくれて仲良くなれるいい時代が来たなーと思います。
地球人同士で争ってないでみんなで楽しく生きて行こうぜと思っています。私にできそうなことは絵で人を笑顔にすることかな。

仕事以外では
30匹くらいの子犬にまみれてみたい。(あっ、これは挑戦では無いですね。)
家の布団を捨てて寝袋生活にチャレンジしたいです。
どこでも好きな場所でゴロゴロ芋虫みたいなのが転がってる光景が面白すぎます。
家に発生するホコリが大嫌いで「本当にどっから湧いてくるんだ」と毎朝憤慨してしまいますが、どうやら家の布製品が犯人のようです。
タオルを撤廃して手拭いに変えたらすごく快適で、これでホコリがなくなったかな?と思いきや、布団達が遠慮なく吹き出していましたね。
実験的に寝袋で昼寝などしてみています。
結構快適なのでチャレンジの日は近いです。

あと、またコロナで家族が家にいる状態が続いたりするかもしれないので、うちにいる男子達に家事や料理を教え込むことにチャレンジします。


※今回は新型コロナウイルス感染拡大防止のためメールでインタビューにお答えいただきました。
お忙しい中、ご対応いただきありがとうございました!
茂苅さんにもお友達をご紹介いただいきました。お楽しみにー!

茂苅 恵/イラストレーター

MJイラストレーションズ 19期修了
鈴木成一装丁イラストレーション塾修了
パレットクラブスクール 17期修了

https://keimoga.jimdofree.com/

Instagram
https://www.instagram.com/keimoga/